親権(2)

親権者指定については、一般的に以下の事情が考慮されていると言われています。

1.継続性の原則従前、子を監護してきた者に継続して監護させる方が、子の育成という観点からは好ましいという考え方です。子の精神的感情的側面からは、父から母へ、又は母から父へと監護する者が変わることは、人格形成上好ましくないということで、理にかなった考え方であるといえます。

もっとも、この原則を絶対視することは危険であり、避けるべきです。親権を取るために、子を勝手に連れ去って、自分が監護しようとした場合、子に悪影響が及ぶ場合があるほか、刑事責任(未成年者略取罪)が問われる場合があります。

2.子の意思の尊重親権者の指定に当たって、子の意思が尊重されるべきことは当然です。但し、子の意思を確認することで、かえって子が傷つくことになる可能性もあります。

そこで、法律上は、15歳以上の子に関して、その子の陳述を聴かなくてはならないとされています(人事訴訟法32条4項)。もっとも、15歳未満の子であっても、その意思を確認することはできるのであれば、実務上、子の意思を確認する作業は行われています。

3.母性優先の原則かつては、乳幼児については、当然に母親が親権者に指定されるという判断もなされていました。しかし、現在では、母親というだけで優先的に親権者の指定がなされるという考え方はとられていません。親権者は、父親と母親の何れが適切なのか、という観点から、個別具体的に総合的に判断される傾向にあります。

4.きょうだい不分離の原則きょうだい(兄弟姉妹)が、両親の都合により離れ離れになるということは、基本的に避けるべきであるというのがこの原則です。これも、きょうだいの年齢や生育環境にそれぞれ相違があることから、絶対的な基準というわけではなく、個別的な事情を総合的に判断することになります。

結果として、親権者を指定するに当たっては、上記のような要素が重視されていることは間違いありませんが、それが絶対的な基準というわけではなく、個別具体的な事情を綜合考慮して、親権者の指定を行っているのが裁判実務であると言えます。

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