実務上しばしば問題となるのが、夫婦が住宅ローン付マンションを所有していて離婚する場合、財産分与にあたってどのような処理をするべきか、ということです。以下、場合を分けて解説します。
(1)住宅ローン残高よりマンション価格が高い場合不動産価格が低迷している現在では、住宅ローン残高以上の金額で売却することができるケースは、必ずしも多くないかもしれません。それでも、このケースのように売却益が出るような場合は、その売却益を財産分与の対象とすればよいことになります。
(2)住宅ローン残高よりマンション価格が低い場合上記(1)とは逆に、不動産価格が低迷している現在では、マンションを売却してもローン残が出てしまうケース(オーバーローン)が多くなっています。
上記「退職金、債務の取扱い」で説明しましたように、債務の分割を実現することは、金融機関との関係で困難が伴いますので、その場合、一方(当初からの債務者)が債務を引き継ぐことになります。
夫が債務者となってることから、夫が住宅ローンを支払いながら、妻(及び子)がそのまま居住を続けるケースも見られます。また、夫が住宅ローンを支払いながら、財産分与としてマンションを妻に分与する方法も見られます。もっとも、この場合は、住宅ローン支払い中の名義変更に金融機関が応じてくれないケースが多いので、マンション名義の変更は、住宅ローン完済後に行われるケースが多いです。
住宅ローンを完済できるのは、数十年後になるケースが多いですから、その間、住宅ローンを滞納した場合、妻の居住権は金融機関との関係では保護されず、抵当権実行等の不安を長期間にわたって感じ続けるという問題が残ります。
上記のように、住宅ローン付マンション(不動産)を所有している場合には、離婚にあたって、その処理にあたって様々な問題が生じますので、専門家による適切なアドバイスを受けることが必要です。