有責配偶者とは、不貞行為をした側の配偶者を意味します。かつて、裁判所は、有責配偶者からの離婚請求を、道徳的観点から認めていませんでした。しかし、昭和62年の最高裁判例により、以下の要件のもと、有責配偶者からの離婚請求も認められるようになりました。
1.夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
2.夫婦間に未成熟子が存在しないこと
3.相手方配偶者が、離婚により社会的、精神的、経済的に過酷な状況に置かれないこと
現在では、昭和62年の最高裁判例を原則としつつも、より緩やかに有責配偶者からの離婚請求を認容している裁判例も見られます。例えば、
- 夫婦の別居期間は、かつて相当長期間を要するものとされていましたが、近時の裁判例では、6年の別居期間で有責配偶者からの離婚請求を認めた事案もあります。
- 未成熟子とは、未成年の子供と考えて結構ですが、通常は、高校生程度までの子供を意味します。未成熟子がいる場合は、子の福祉という観点から、未成熟子がいない夫婦間での離婚に比べて、離婚請求が認められにくい傾向があります。
もっとも、未成熟子がいたとしても、小学生と高校生とでは成熟度や離婚によって子に与える影響は大きな違いがありますし、金銭面その他の方法で、未成熟子にマイナスが生じないならば、離婚請求が認められるケースもあります。
未成熟子を取り巻く具体的な事情によるところですが、年齢の低い未成熟子がいる場合は、やはり離婚は難しいといえるでしょう。 - 「相手方配偶者が、離婚により社会的、精神的、経済的に過酷な状況に置かれないこと」という条件は、基本的に、慰謝料や財産分与等によって解決される問題ですので、有責配偶者からの離婚請求の可否にあたっては、大きなウエイトを占めるものではないと思われます。
しかし、実際問題としては、相当の金銭的給付をすることが、有責配偶者からの離婚請求を認める前提条件となると解さざるを得ません。
有責配偶者からの離婚請求の可否については、上記のような各要素を具体的に検討して判断が下されます。昔ほどは、離婚請求は難しくなくなってはきておりますが、やはり離婚が認められるケースは少ないという前提で、考えた方がよろしいかと思います。